【きものなれゐて】の意義

2月14日 は【きものなれゐて】の新年会。
今回はCOCON烏丸B1という便利な場所の中華料理店。

20名越えの参加者全員がきもの姿ということで京都では珍しくない状況も
“ワゴンバイキング”という食べ放題コースはさすがに珍しいかと(^_^;)

つまりたくさん食べても平気なぐらい
自分で着るということは“楽”ということになる。

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【きものなれゐて】とは
平安時代の手習い歌「あめつちの詞」よりいただいた
“きもので慣れて居て”という意味でつけている会のタイトル。

きものを楽しむということは
手順の習得よりも慣れてしまうこと、居ることを苦にしなくなることではないかと思う。
何ヶ月習っても、実際に外へ着て出かけて行かなければ
数ヶ月離れると忘れてしまい自信がなくなってしまう。

かといってなかなか自分の意思で着て出かけるのには
初心者は勇気も必要だ。
このなれゐてはそんな気持ちでいる人の背中を押してあげる会。
実際会場には着付関連の仕事をしている参加者も数名いるので
会場に着いた時に“手直し”をしてもらって安心して食べて、帰ることが出来る。

この日も数名、“直してください”という要望があって少しだけ触らせてもらったが、
実際はそう大きく直しているわけではない。
基本、充分きれいに着て来られているのだ。
触って直す際は、“この方がよりきれいかも”という程度。

大事なのはそこへ自力で着て来ているという事実。
もちろん、着物での自力着付はしないという“方針”の方々もいて
喜んで着付はさせてもらう。

持っているもの、箪笥に入っていた物を活かし、
自分の身体につけて出かける。
考えたらシンプルなことなのだが
こと着物に関してはいろんなハードルがあるような気がするのも現実だ。
そういう気持ちのタガをはずしていくのも
私たち着付師や着物で仕事をしている者の使命なのではと思う。


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↑丸帯を半巾帯に作り変えて御召にON!

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     ↑今日の着物は関絹織物さんの大島紬+ホタルぼかしの長羽織・・・ぁぅ…羽織にアイロン掛けておけばよかった~~(;´Д`)


京北でのつむぎ織

京都は右京区の西北 京北町というところできものを手織りしている方がいらっしゃる。

陣内章代さん
ここのブログで5/28にUPした蒔糊友禅陣内久紹さんの奥様。

ご主人はいわずもがなの超こだわりの作家さん。
そして章代さんは優しい奥様でありながらやはり1反1反を糸染めから織りまでお一人で丁寧につくっておられる。
染織作家志村ふくみさんに師事され、
京北へ移り住まれてからも志村さんのもとへ通い染織りを習得された。

先日この陣内ご夫妻のアトリエを訪ねた。

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糸はすべて植物染色。
その多くは地元京北の植物で染料を取っている。

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染料は
“野いばら” “萩” “ねむの木” “月桂樹” “梅” “くさぎ(臭木)” “よもぎ” “桜”etc.
媒染によっても同じ植物からいろいろな色を出して染めている。
ブルーを表現する“くさぎ(臭木)”は時に無媒染の場合もあるとのこと。
写真の桜染はその桜の灰汁で媒染している。

どの染糸も優しくふんわりとした明るい色。
さらに植物の中に潜むパワーもその染め糸にうつりこむ。
きっと着る人にも、着姿を見るひとにもほわっと暖かい気持ちと
自然(の持つ命の力を伝えるだろう。

経糸には細かく差し色の糸を挟みこんでいるので地色に深みと奥行きが出る。

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残念ながら現在は製作途中の状態なので完成品としてのきものの写真は撮れなかった。

アトリエ周囲は山の美しい緑がたくさん。
気温も今はとても過ごしやすい時期だ。
機織りのぱたんぱたんという音が里山に響くのはきっと心地よいだろう。

陣内久紹さんの蒔糊友禅と章代さんのきものの展示会は今年(2014年)10月に九州で開かれる。
10月24日~27日福岡で、続く10月30日~11月3日佐賀の予定。
詳細は“陣内久紹 陣内章代”のサイトきもの展”情報にて近いうちに告知予定とのこと。

お近くの方ぜひお立ち寄りを!!
優しい気持ちと生命のパワーをもらえると思います!

絞り着尺の面白さ

絞り着物第二弾。

今度は最近コーディネートした単衣もの。

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縫い締め絞りに幾何柄の袋帯。
きものの生地は大島紬。やはり藤井絞さんのすっきりとしたデザイン。
袋帯は今河織物さんの木屋太ブランドを合わせる。

大島地なので薄いがしっかりとした生地。軽くて裾さばきが良く
この時期のじめじめした気候にはぴったりだ。
絞りの着尺は街着仕様とも言えるが、絞る面積が生地全体なので
ある意味裾柄のみの訪問着よりも手間が多いとも言える。
絞り目の拡大↓
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針穴が見えるように気の遠くなるような細かな作業の先に
このようなカッコイイ文様となる。

木屋太帯は大胆になりすぎず、きものの地色を感じて添いが良い物を選ぶ。
この時の帯揚げはきもの地色の共色に近いクリーム色。帯締めは生成りに黒糸をあしらったモダンなものを。

とにかく全身に柄があるので色数が増えないようにする。
せっかくのしゃれた絞り目文様を引き立たせるコツでもある。
同時に単衣きものである以上、暑苦しくならないように。

次回の紹介はより涼やかな単衣友禅です。

疋田訪問着

少し前だが4月のパーティ用着物をコーディネートした。
   本疋田訪問着1cs


  ↑仮絵羽で試着時点での写真なので小物はナシ。

 総疋田(絹糸でくくった疋田絞りが全面に)のちょっとスゴい着物。
仕立上がって柄がきっちりと合って来るとその迫力はさらに増した。

絞りの着物はきもののパワーが強くてコーディネートが難しいが、黒地に柳と白鷺の刺繍柄袋帯で。
帯が腹と太鼓の柄で黒の無地場がある為、総疋田のパワフルな加工+柄と喧嘩せずに納まる。
帯揚げはグリーン系縮緬無地で
帯締めはパールを贅沢にあしらってある太めの若草色。(小物写真撮り忘れ( ┰_┰) )
その帯締めは実は振袖用。

祇園や新地のママさん達が揃う席だったので
友禅や刺繍、モノトーンものを避けての選択だった。
これなら似たような着物でかぶってしまう心配は皆無である。


特筆すべきはやはりこの疋田鹿の子。
拡大写真↓
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粒の立ちがきりっとしていて見事に揃っている。

大胆な柄もこの鹿の子の頭の粒が小さい為にメリハリがきいて引き立つ。
藤井絞さん製。


『もう一回着ようかな』との発言があり、かなり気に入った様子。

1シーズンに同じ着物を2回着ることは稀なのでほっと一安心。

蒔糊友禅作家さんの個展へ

先日、蒔糊友禅作家『陣内久紹』さんの個展へ伺ってきた。

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 まず“蒔糊(まきのり)”とは。

 以下、陣内久紹(じんのうちひさつぐ)さんのサイトより引用。

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蒔糊は米粉や糠(ぬか)に亜鉛松やリン酸を加え、こねたり、蒸したりした後、
板に薄く練りつけ、天日で乾かわかし作ります。

れを細かく砕いて何種類かの大きさの蒔糊の粒にします。
 
 その粒を、濡れた生地の上に手でふっていきます。

蒔糊が乾いた後、全体の量を見ながら、塊をピンセットで弾いて整えていきます。
  ↓   ↓   ↓

整えて全体に均一に(デザインによっては、ぼかしたり、模様にしたりしますが)なったところで、
下から水を含んだ刷毛でぬらし、
上から霧を噴きかけたりして、生地に蒔糊を定着させます。
  ↓   ↓   ↓

それから、染料の発色をよくするために、
豆汁(ゴジル=水でふやかした大豆をすりこぎで潰して水に溶かし、濾したもの)を蒔糊の上から刷毛で引いていきます。
 
↓   ↓   ↓

それが乾いた後、地色を染めていきます。

そうすると、蒔糊の部分が染まらずに白い蒔糊の形が残り、白い粒粒が現れます。』
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つまり、パリパリと細かく砕いた糊を“指でつまんで生地の上に蒔いて”模様を表現しているのだ。

訪問着なら肩・裾模様などのバックや柄の表現となり、
無地感覚の小紋に至っては一反の生地全体へ
均一に、密度の過不足なく蒔いて行く。
(暈しの場合は繊細にグラデーションを構成するよう蒔く)
 間隔のつまった箇所はピンセットでつまんで蒔かれた糊を取り除くという作業も。
 そこまで細かい作業で出ている柄だとはなかなか想像しにくいが

遠目には無地に見えるような全体的な点描模様も、
機械は使わず手で蒔いている。
   temakinori.jpg

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友禅の人間国宝、故森口華弘氏はその蒔糊友禅の第一人者だった。

その森口華弘氏へ陣内久紹氏は師事していた。

個展は小野郷にある茅葺のギャラリー(日下部邸)にて。

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ギャラリーにて陣内先生の奥様(やはり染織家さん)が説明をしてくださる。

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同行した陶芸家のYSさんも最近着物でのお出かけも増え、熱心に説明を聞き^^

奥様が着用されていたのは無地感覚の蒔糊友禅裾ぼかし。帯も蒔糊友禅染め帯。
淡いグレー地に極小の粒が上品だ(粒が遠目には無地に見えるほど細かい)。
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蒔糊友禅は技術保持者が少ないことと、手間が半端ではないことから
市場にはたくさん出回っていないのが現状。

よく似た点描柄着尺や訪問着はあるが
多いのは型紙によるもの。もしくは蝋たたき染めだろう。
蝋たたき染は刷毛に蝋を含ませて生地に叩きつけて防染し、梨子地蒔絵(なしじまきえ)のようにする染色法。
その違いはやはり“粒”を見ると明らかである。

蒔糊は割って細かくするために一粒一粒に“角”がある。
柄表現を美しくするために同じ粒の大きさごと管理していて、
いろいろなサイズの粒を使い分け、
蒔糊で防染し、染料で染める。胡粉(白顔料)で染めることもある。

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右の写真は薊の花や葉の周囲の白い部分が防染後の胡粉(白染料)染め・・・!!!
全体では↓このように柔らかで深みのある印象になる。

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陣内久紹氏の友禅染着物はどれも魂のこもった素晴らしいものだった。
自然界のさまざまな感動を意匠に込めて蒔糊と手描き友禅で表現している。
作家さんというよりも職人さんのような素朴でおだやかなお人柄と根気の要る作業、そしてものづくりへの情熱。

技術を習得するのはたいへんだったことだろう。
でも後世に残して行かなくてはいけない染色技法である。
出来上がったものは日本のホンモノが持つ深いパワーがこもっている。



(※記事UP後に陣内さんよりご指導いただき一部訂正いたしました。)
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京都で着物スタイリスト、着付コーディネートをしています。
きものに関する出来事や気がついたことなどを綴っていきます。

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