開田の麻織物

夏は麻織物のきものが活躍するシーズンだ。
薄くて肌につかない質感は着心地も見た目も涼やか。

その“麻”素材、今でこそ夏の着物や帯が主流なのだが
元々は絹や木綿などなかった時代から着られている。


開田では“麻を織れないものは嫁にせぬ”と言われたほど
女性はみんな麻を織っていた。
木綿や古着に交換したりするのにも麻織物が基本だったようだ。
「開田村の麻織の技法」は長野県選択無形民俗文化財。

昭和50年代までは開田で麻織物が生産されていたらしいが
その後途絶えてしまった。
そして時は過ぎて2年ほど前、
木曽町に合併した旧開田村の地域自治組織の呼び掛けで地元のお年寄りから
開田の麻織物技術を伝承しようとする動きが再始動した。

麻の織布のことを現地の言葉で“のの”と言う。
今回開田高原へ行き、その『麻布(のの)織りの家』を訪ねた。
毎週水曜日に有志が集まって作業をしているとのこと。

     
    麻布織りの家


伺った時はちょうど食後のティータイムで話題はやはり麻布のこと。


        ティータイム



作業は乾燥している麻束(ここまでの工程も大変なものだが)から
麻績み(おうみ)作業や糸に撚りをかけたり機織りをしたり。


        麻束と糸

 

        オンケ(おぼけ)


一筋の麻を取り出してさばきながら糸績みをしていく。
さばいた糸の一本を口にくわえ、手でさばいたもう一本の糸に撚りをかけながら
口にくわえた方を挟んでいく。
口にくわえている方は湿っているので撚り込んだつなぎ目がよく締まるとのこと。 


        麻績み


糸績みの作業の手元を見ていて一定の長さしかない麻繊維が継ぎ目がわからない状態で
長い糸になっていくのがとても不思議だった。
そこで糸をつぐ方法を訊ねると

継ぎたい端の少し手前から二つに糸を割り、Z撚りを両方にかける。
         ↓
別の麻糸をその二本に挟んで一緒にS撚りをかけていく。

これでどこで継ぎ足したかわからないきれいな糸の状態となる。




        糸績み




        撚りかけ
        績んだ糸に糸車で撚りをかけて麻ガラ(オガラ)に巻きつけていく。



その後は機に掛けるまでの工程があるのだがその作業は今回は見られなかった。
ただ調べたところ、糸に糊をかける際、結城紬はうどん粉だったのだが
この開田の麻はソバ粉を使っていたとの事。この麻布織りの会の糸もやはりそうなのかな。
次にきちんと聞いてこなければ。。。
しかし、ソバ粉とはさすが信州だ。



そして機織り。


       畑中さんの機


この黒い使い込んだ機。やや座面の低い高機なのだが
なんと、麻織物の伝承者として県無形文化財に選ばれた故畑中たみさんが実際に使用していたもの。

商品としてたくさんの麻の布を開田から世に出すのにはまだ時間がかかりそうだが
ぜひとも歴史をつないで麻織物を開田で復活させてほしいものである。


       織り上がり布




一日中座って麻績みをしているおばあさん。
子供の時は手伝いとしてずぅ?っと麻績みをしていたとのこと。
無くしてはいけないものだと実感した。



                 糸績み




                   
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京都で着物スタイリスト、着付コーディネートをしています。
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