金沢の友禅工房へ
加賀友禅の街、金沢へ工房の見学に行った。
紬好きの為にとかく友禅染めのはんなりした着物は遠ざけがちだったのだが
染めの工房を訪ねたことで友禅きものの製作行程の多さは勿論のこと、着物へのそれぞれの人たちの情熱を感じることができて改めてその奥深さを実感した。
加賀友禅というと「虫食い」や「ぼかし技法」などで柄が瑞々しく“はんなり”しているものが主だと思っていたが、実際に作家さんの工房を訪ねると
今の加賀友禅は斬新ですっきりした柄も出ており、実にいろんなイメージの着物が製作されていることを知った。
加賀友禅は“糸目(いとめ)”という縁取りが必ず柄全てにある。


この糸目(餅糊)を柄のフチに線で描いた後に柄の色を乗せてその上を大豆の糊で伏せる方法がひとつ。
この方法では着物の地色を後で染める。
そしてその乗せていた糊を大きな水槽の流水で落とすのだ。

サスペンスドラマに出てくるシーンにもあるが昔はよく金沢市内を流れる犀川か浅野川で糊落としをする友禅流しが行われていた。
今ではそのほとんどを『染色団地』という友禅染めの様々な行程を行うセンター内の人工の川でされている。
現在ほんとの友禅流しを見ることができるのは浅野川でされている留袖の糊落としぐらいだ。
そしてその職人さんが引退されるともう川での友禅流しは見ることはできない。
一方、その糸目の種類が「ゴム糸目」と言われる物を使う作家さんもいる。
このゴム糸目は落ちにくいので柄の色を入れる前に地色を染める。

先の餅糊を使う糸目よりもこのゴム糸目は細かな線をはっきりと描くことができるので微細な柄の表現が可能だ。
上の写真の大胆な柄も加賀友禅(ゴム糸目)である。
薄茶色の部分は糊で柄を伏せた後に挽き粉(細かな木の粉)でベタつきや糊の乾燥を抑えている。
この生地は縮緬(ひと越し)だが、そのほか白山紬や結城紬など白生地で織られた紬へ染められた物ものも今はかなりある。
パーティ形式の披露宴や観劇・食事など友禅染の紬地はその用途も広がる。
後染めの着物として代表格の一翼を担う加賀友禅だが、その限りない可能性とは裏腹に紬などの織りのしゃれ着物に押され厳しい時代となってきているのが現状だ。
しかし現代の加賀友禅は決して華やか、美しいというだけではなく、長羽織向けの柄やシックで年代を問わない抑えた意匠も多い。地色も薄い色が多かったかつてのものとはだいぶ趣きが変わっていた。
そして各産地の紬同様、加賀も後継者不足だ。
行程が分業となっているので柄おこしや色さし以外の糸目・糊落とし・整理などの職人さん達も地道な作業が多い為かその悩みは深刻。
作家さん、職人さん達が笑顔で仕事を続けていけるようにするのには
やはり“消費される”ことが不可欠なのだが
本加賀友禅の場合はどうしてもその価格のあり方に消費されることへのブレーキがかかる。(勿論それだけではないが・・・)
いい物が出来るのにはそれなりの人手が加わる。
そしてそれは当然価格に反映してしまうのだが
イイ物は高いという方程式から「高すぎ」のものにならないよう
室町はじめ各流通業者さんの価格に『誠意と節度』を持っていただきたいと
心から願ってサンダーバードに乗った。

第31回 加賀友禅新作競技会 金沢市長賞(独立作家の部)
訪問着「十六夜(いざよい)」 鬼島武司


鬼島先生の新作 南天の訪問着(肩部)と落款
紬好きの為にとかく友禅染めのはんなりした着物は遠ざけがちだったのだが
染めの工房を訪ねたことで友禅きものの製作行程の多さは勿論のこと、着物へのそれぞれの人たちの情熱を感じることができて改めてその奥深さを実感した。
加賀友禅というと「虫食い」や「ぼかし技法」などで柄が瑞々しく“はんなり”しているものが主だと思っていたが、実際に作家さんの工房を訪ねると
今の加賀友禅は斬新ですっきりした柄も出ており、実にいろんなイメージの着物が製作されていることを知った。
加賀友禅は“糸目(いとめ)”という縁取りが必ず柄全てにある。


この糸目(餅糊)を柄のフチに線で描いた後に柄の色を乗せてその上を大豆の糊で伏せる方法がひとつ。
この方法では着物の地色を後で染める。
そしてその乗せていた糊を大きな水槽の流水で落とすのだ。

サスペンスドラマに出てくるシーンにもあるが昔はよく金沢市内を流れる犀川か浅野川で糊落としをする友禅流しが行われていた。
今ではそのほとんどを『染色団地』という友禅染めの様々な行程を行うセンター内の人工の川でされている。
現在ほんとの友禅流しを見ることができるのは浅野川でされている留袖の糊落としぐらいだ。
そしてその職人さんが引退されるともう川での友禅流しは見ることはできない。
一方、その糸目の種類が「ゴム糸目」と言われる物を使う作家さんもいる。
このゴム糸目は落ちにくいので柄の色を入れる前に地色を染める。

先の餅糊を使う糸目よりもこのゴム糸目は細かな線をはっきりと描くことができるので微細な柄の表現が可能だ。
上の写真の大胆な柄も加賀友禅(ゴム糸目)である。
薄茶色の部分は糊で柄を伏せた後に挽き粉(細かな木の粉)でベタつきや糊の乾燥を抑えている。
この生地は縮緬(ひと越し)だが、そのほか白山紬や結城紬など白生地で織られた紬へ染められた物ものも今はかなりある。
パーティ形式の披露宴や観劇・食事など友禅染の紬地はその用途も広がる。
後染めの着物として代表格の一翼を担う加賀友禅だが、その限りない可能性とは裏腹に紬などの織りのしゃれ着物に押され厳しい時代となってきているのが現状だ。
しかし現代の加賀友禅は決して華やか、美しいというだけではなく、長羽織向けの柄やシックで年代を問わない抑えた意匠も多い。地色も薄い色が多かったかつてのものとはだいぶ趣きが変わっていた。
そして各産地の紬同様、加賀も後継者不足だ。
行程が分業となっているので柄おこしや色さし以外の糸目・糊落とし・整理などの職人さん達も地道な作業が多い為かその悩みは深刻。
作家さん、職人さん達が笑顔で仕事を続けていけるようにするのには
やはり“消費される”ことが不可欠なのだが
本加賀友禅の場合はどうしてもその価格のあり方に消費されることへのブレーキがかかる。(勿論それだけではないが・・・)
いい物が出来るのにはそれなりの人手が加わる。
そしてそれは当然価格に反映してしまうのだが
イイ物は高いという方程式から「高すぎ」のものにならないよう
室町はじめ各流通業者さんの価格に『誠意と節度』を持っていただきたいと
心から願ってサンダーバードに乗った。

第31回 加賀友禅新作競技会 金沢市長賞(独立作家の部)
訪問着「十六夜(いざよい)」 鬼島武司


鬼島先生の新作 南天の訪問着(肩部)と落款