胴抜き仕立

着物の仕立は袷と単衣が主だが、他にもいろいろある。
その中の一つとして、『胴抜き仕立』というものがあるので
ここでご紹介。
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すすきの柄の染紬なのだが、単衣では9月いっぱいしか着ることが出来ない為
“胴抜き仕立”になっていて10月にも着られるように出来ている。
表の地色が薄い芥子色なので八掛もその“共薄(ともうす)”の淡いクリーム色。
八掛の上部の白い生地が胴裏の生地なのだがウエストの少し上あたりまでしか付けていない。

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その胴裏のついていない部分は単衣となっていて、背縫いは“背伏せ”といってバイアスで背縫いが包んで縫われている。

つまり一見袷のようだが実は上半身と袖は単衣なので軽く、
気温がまだ低くない9月の時期でも無理なく着られるというスグレ物だ。

この胴抜き仕立は胴裏生地から八掛まで下への重さがあるために
なるべく表生地がしっかりしたものに適しているとされている。
縮緬生地は薄くない物。他は紬地や御召しなど。

特に御召しは生地の打ち込みがしっかりしているため
すっかり袷仕立にすると上半身がもたつく場合があるので
この“胴抜き仕立”が適している場合が多いのではと思う。

ちなみにこの着物の持ち主はとても暑がりサンなので
胴抜き仕立の着心地はとても気に入られている。

胴抜き仕立にはこのちょっとの幅の胴裏生地を足さずに
八掛を表地へ裏からじかに縫い付けたり、袖を袷にするケースも見たことがある。
ただ、こうやって少し手間をかけたものの方が当然八掛の安定感は増す。

昔の御召しはとくに地厚の場合が多いので
もし譲られた着物の中に御召しがあったら、洗い張りの後の再仕立に
この胴抜きを採用されるといいかもしれない。

難点は胴裏生地を中途半端に使ってしまうので
“1匹”(3反分の量)※で買っている胴裏を使うとあとの残り生地がしっかり
反数分取れなくなるのだ(;´Д`A ```
この胴抜き仕立に使う胴裏の用尺は不勉強のために定かではないが・・・(゚_゚i)
袷仕立二反分と胴抜きの部分取りでけっこう余るようになるはずである。
1匹を買って一反でも胴抜きを入れようと考えたなら袷仕立用は二反しか取れなくなる。
胴抜きの際に袖を単衣にするか、袷にするかでも胴裏生地の残り分が違ってくるのでそのあたりは仕立をお願いする方とよく相談した方が確実だ。

※補足: 胴裏は袷仕立を頼む際に一着分の料金を払うのが通常だが
     三反の袷仕立が出来る分(=1匹と言う)をまとめ買いすると少し安くなる。

     私もいつも仕立てをお願いしているところへ胴裏一匹を購入して
     ボトルキープならぬ“胴裏キープ”をしているv(。・・。)♪




無双きものの悩み

とあるクラブの若いママの着付けに行ったときのこと。

『着物を店のお客さんの呉服屋さんに買わされた・・・( ┰_┰) 』と・・・。
まだ、その着物は仕立て上がっていなかったのだが
どうもかなりの高額だったらしい。
“買わされた”という発言が気になって聞くと
欲しかった着物とは違うものを勧められて勢いに押されたらしい。
しかもその呉服屋さんに行く度に何も買わずに帰ったことがないという。
お見事というか感心するというか、、、(;^_^A

洗いを出していた着物を取りに行ったそうなのだが
念のためにお金を持参していたらしい。
その“念のため”というのがまた不思議なのだ。何のための“念”なの?と聞くと、
欲しくなった着物を2~3回の分割払いにすると
支払いに行く度にまた別の着物を買ってしまうから、もし欲しい物があっても分割にしないで済むように“持って行った”のだそうであるw

さらにどんな着物を買ったのか聞いてみると
『無双』の着物らしい。

(-_-)ウーム・・・・

『無双』というといわゆる“紗合わせ”の着物である。
一般的には無双は6月と9月上旬に着る着物とされている。
ただ、「祇園」は“一般”なのだろうか・・・。
普通の着物ならよりたくさん着れるように季節の先取りや温暖化の現実から多少の時期越えも容認される風潮があるが
無双に関しては普通の着物というより“通好み”の域のものだと思う。
特に祇園ではおもてなしをする為の着物であり、季節“感”を大事にしなければならない場所だ。
季節を謳歌する着方の無双なのでそれを選ぶ人はそれなりの意識を持って欲しい。
二枚合わせにはなっているが『紗』を9月に着るのは
他のママ達には避けるように言っていた手前、返答に窮する。
でも9月に着るよう新調した着物を着ないほうがいいとも言いにくい。

しかし!勧めた呉服屋さんももうちょっと神経を使って欲しいものだと
つくづく思う。

そのママは“単衣”が欲しかったそうだ。
確かに単衣の時期と重なる時に着られる無双なのだが
色柄は気に入ったとはいえ素材が難しそうな着物なので後悔しているらしい。

歳が若いことをタテに今週1日だけ着せてしまうか、
(もし先輩に何か言われたら新調したから1回のみ・・・と言い訳を用意w)
あるいは来年の6月に安心して着る為に保留するか。。。。

場所が祇園のド真ん中なので
今なお悩むところである・・・。









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京都で着物スタイリスト、着付コーディネートをしています。
きものに関する出来事や気がついたことなどを綴っていきます。

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