季節を着る

やや春めいた陽気の日となった。


季節を限定するきものは着る時期は短いが
かえってその時期にしっかり着ようと言う気持ちができるので
意外と着用率の高いきものになったりする。

先週末の祇園で仕事をしているお客様、
以前購入していただいたセットを今年も着てくださる。

この時期はやはり

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写真ではわかりにくいがあわーいピンク色地に槍の手描き京友禅附下げ
染匠市川さんの作である。
西陣のやはり淡いピンクとグレーの格子帯を合わせて。

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小物もこのふわっとした色合いを邪魔しない物で。

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季節の訪れを盛り込む楽しみ方はきものの醍醐味。
着る人ならずともその着姿を見る人も楽しめる。

これからはだけでなく福寿草、猫柳やモクレン、山茱萸(サンシュユ)などの柄もいいだろう。
きものだけでなく帯の柄にも登場しそうだ。

今週末はもう三月。
卒業、卒園のシーズンに突入する。
美術館などのイベントも増え、結婚式もある。
季節を着るチャンスはどんどん多くなってくる。




桜のきもの

久々のUP。
だいぶ間があいてしまった。。。。。

満開の桜はソメイヨシノから八重桜へと移りつつある。
気温が急に上昇したので
御室の桜も今年は早そうだ。

今月は下旬までは桜にまつわる柄の着物は頻繁に登場する。
「桜の柄」自体はおめでたいから、とか国の花だからや、
さくら好きな有名人が年中着ていたなどのいろんなケースで
4月だけではなく、きものではもっともスンダードな柄として四季を問わず
着られる。

季節感を重視するなら今がもっとも支持される時期。
枝や幹、山桜の葉などまで描かれているような写実的な描写の場合は
特に季節感が出やすいので、ほかの季節よりもやっぱり春だろう。

桜が季節を問わない例としては浴衣がある。
描かれる桜はほとんどがデザイン化されていて
イラスト的な桜の花となる。
あと、留袖の桜。
おめでたい気持ちの表現としてはまさにふさわしい花となるので
黒留袖、色留袖にはよく描かれる。
そのほか時期的に広く着られるものは“桜の花びら”の柄だ。
デザインとして描かれるために四月ならずとも着られるモチーフの代表となる。




さて今月2日、祇園辰巳神社前“振舞い酒”でのママのきもの。

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お気に入りの右近桜の真珠箔の帯に今年は白地の京友禅の桜柄。
写実的な風景の中の桜が肩と裾に広がり、まさに今着る着物となっている。




コーディネートはこんな感じ↓

        mama-sakura1

きものの中に強い色がないので
全体的にふんわりと淡く清潔感が出るよう
薄いグレーの帯締め+グレーぼかしに白い吹雪の帯揚げ。
重ね衿は黒にしたがたくさん見えると白/黒でキツくなるので
細く1?2ミリ程度が衿元から覗くぐらい。
重ね衿に黒を使うことで帯の黒っぽさのみが主張しすぎないように配慮。
初めはグレー重ね衿を入れようとしたのだが
実際には黒を使う方が引き締まったのでこれに決定した。

お店で動いている時に黒い重ね衿がずれて幅広に出ないよう
着付けをしている時に安全ピンで重ね衿をきものの掛け衿にしっかり止めている。

安全ピンは“金具”となるので脱いだ時にはすぐにはずさなくてはならない。
放置すると必ず錆びが出るからだ。
大きな安全ピンは針が太く生地を傷めるので小さなもので。
後衿のところも三ツ山のクリップではなく安全ピンで止める方がズレない。

着付をしながら使えるので即効性は抜群。
どの重ね衿にするかは着る直前に決まるため、
針と糸で着る前に縫いつけていると、その間待たせてしまうのと
実際に着付けた時にひずむ場合があるので
衿合わせをしながら重ね衿の一番端で使う。
重ね衿のズレを胸紐で締めて押さえ込むのは苦しくなるので
もっぱらこの方法を採用している。

安全ピンを使うことには賛否両論あるかとは思うが、
長年使用していて結果としてマイナス効果はほとんどないため
やはりスグレ物と思っている。


これからは桜の着物からあやめ、杜若や牡丹、藤の柄へ。
季節感がある着物はそれがその季節に着る楽しみへと繋がる。


お正月のきもの

今日から街が本格的に始動している。
祇園も今日からのお店がほとんどで、きものを着る人がさすがに多く
今週いっぱいはありがたいことに夕方からが忙しい。

初日の今日はママと何にしようか一緒に悩んだ。
平日の“ご飯食べ”用(ちょっと気合)や週末用(かなり気合)の色を考慮しながら
本日のはお正月らしさと“格”のあるきものをチョイス。

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  黒地の唐子人形がたくさん刺繍されている訪問着に“燭光金”と名づけられている袋帯。
 留袖風にならないよう重ね衿を深い鶯色の渋めのものを使い、
 帯締めと帯揚げは淡いぼかしのグレー調子。帯締めはもちろん平打ち。
 半衿は生成り地に共色の琳派の刺繍の入っているもの。
 黒漆の末広を胸元に挿して完了。

黒に金の帯となるとどうしても留袖のイメージになるのだが
この訪問着は前肩の刺繍も宝尽くしと豪華なのでなんとか大丈夫か・・・


1月の初め2週間は全日程全て違うコーディネートで送り出す。
紬は着ずにallタレもの。
何を着るかは当日の“気分”が最優先w
予定を立てても気が変わることも多いので長年の経験でだいたいの計画しか立てていない。
特に風邪を引いたりして体調が悪い時にはゴロっと変わるのだ。
(それでもピシッときもので出かけるところはさすがプロである)

一年のうちでも神経を使う期間だが、新しいきものをおろしたりする時はやはり楽しみ。
さらに違うコーディネートを発見したり、前年に新しい帯が加わると
昨年まで箪笥にあっても敬遠していたきものが着られるようになったりする。
今年の怒涛の二週間はどんな出会いがあるのだろう。。。





祇園のママの西陣帯(TIBETAN)

久々のカラシ色の無地結城紬。
この紬もかなり年数が経っていて毎年この時期には袖を通す。


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こっくりした色なので墨色のしゃれ袋帯を合わす。
この袋帯、カーペットやラグにある『TIBETAN』というタイトルである。
チベット自治区で生産された手織り絨毯の柄風で
オリエンタルな模様が主体のデザインシリーズ。
質感もツヤ消しの柔らかい手触りで結城紬にはよくマッチする。

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         ↑クリックで拡大

お腹部分は縦ボーダーのみで太鼓部分の紋章ではないから
比較的さっくりとした正面姿になる。

半衿は黒ビーズの変わり編み。
帯締めは黒系、帯揚げは紋章の色でモカ茶にした。

ママのお店は照明が暗めなのでこういったはっきりしたコントラストの
コーディネートは映えやすい。
胸元の色効かせとして黒の重ね衿を用いた。
下前の衿元に半衿と同色の重ね衿は引き立たないがそれが狙い。
上前の帯上胸元部分のみにカラシ色へすぅーっと黒い細い線が半衿で覗く。
うるさくならないようにメリハリをつける手段である。

もちろん草履も黒のエナメル。
出かける際は黒いカシミヤの大判ストールをふわっと巻いて
颯爽とタクシーに乗り込んでご出勤。
かなり冷え込んだ夜だったのでそういう意味でもいい質感と色合いだと思う。





祇園のママ(染め紬:イチョウ柄)

イチョウがそろそろ色づき始めるころとなった。

そこで登場色づき始めのイチョウ柄(そのまんまw)

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話しは逸れるがイチョウは漢字で“銀杏”とも書くがこれはギンナンとも読む。
ギンナンは実のことを指しそうであえて“公孫樹”と表示。

『銀杏』はそのままでは「ぎんきょう」と音で読むが
中国は唐の音で「インキャウ」と読み、
それが「イキャウ」となってさらに「イチョウ」になったとのこと。

『公孫樹』の名は種を蒔いてから孫の代にならないと実をつけないことから
名前が由来されているようだ。


戻ってきものの話。
帯はイチョウの葉の色から黄色と黄緑色を使った段模様の袋帯。
この時の半衿は茶色のビーズ。

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帯締めはイチョウの幹の色のこげ茶を採用。
帯揚げはその同系色で幹を軸とした裾模様を引き立てる。

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きものの生地は結城紬(恐らく石下結城)らしい。

いわゆる“染め紬の訪問着”なので
しゃれ感を含んだパワーのあるきものだ。
秋の紅葉というと、もみじ(楓)を描いたものが多いが
そういう点でもこの柄のきものは個性的である。

毎年この時期に一度は袖を通されているので
もうかなり柔らかくなっている。(10年以上前に作ったもの)
花街の仕事でも秋から冬は深夜かなり気温がさがるし
見た目もふんわりと暖かそうなので結城紬でも
訪問着や無地であれば着用回数は多い。

季節を限定する柄のきものは“その時期”にしか着られないということにはなるが、
逆に“その時期ならでは”の旬のきものとしての楽しみは大きい。



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京都で着物スタイリスト、着付コーディネートをしています。
きものに関する出来事や気がついたことなどを綴っていきます。

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